いつか会える日

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山の上から

山の上から

 朝のお勤めを終えると、線香に火を点け、大きな麦わら帽子をかぶって竹の杖を突き、裏山の墓地をお参りするのが、夏の頃から日課になりました。杖は檀家の塚田さんが私の身長に合わせて作ってくださったもので、その軽さ、握りよさ、長さが絶妙ですっかり手放せなくなっています。
 下の墓地から光遊廟、中段、上段と参って行き、歴代廟がゴールです。歴代廟も各上人の墓碑が重なり合わないように改修が終わり、以前にも増してすがすがしい霊域になりました。帰りに山の上から視界いっぱいに広がる町並を眺めるのもたのしみです。この山の高さは海抜二十メートルぐらいでしょうか。暮らしのさまざまな音や温もりも感じられる、ちょうどよい高さで、眺めているうちに、この町が、今日も一日平安であってほしいという願いが自然に湧いてきます。
 ところで、毎日お参りをしていると、お墓に供えられた花が枯れているのが気になり、それを片付けているうちに、墓地に植えられたいろいろな植物が伸びっぱなしになっているのが気になってきました。時折り朝参りに来られる檀家の高橋さんと、最初はハサミで形を整えたりしていましたが、大木のように育って他の墓地に覆い被さっているのもあり、とてもハサミでは間に合いません。二人がかりで二日間、びっしりと絡み合った枝をノコギリで切り払ったところ、周囲一面に陽差しがそそぎ、気持のよいことこの上もありません。こうなるとあの木もあの草もほうっておけなくなります。そこへ高橋さんの知人で、こういう仕事が大好きと仰しゃる小林さんも加わってくださり約一ヶ月、上段の墓地全体が見違えるように明るくなりました。
 それにしても、私と同年配のこの二人の女性のパワーには驚かされましたが、考えてみますと春秋のお彼岸、お施餓鬼、お会式などの諸行事をはじめ、餅つき、花まつり、盆踊り、万灯講、バザーなど、すべてが多くの女性のパワーで支えられていることに、改めて気がつくのです。

(ようげん寺報 2014年12月15日発行 第9巻 第6号掲載)
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