いつか会える日

13
高齢者講習会

高齢者講習会

  七十歳になると、免許証の更新の前に高齢者講習会を受けなければなりません。更に七十五歳からは認知症のチェックも追加されるようですが、高速道路の逆走事故が相次いだ昨今、なるほどなと思うのです。
 昨年の暮に講習会の案内が来ていたのにもかかわらず、三月生まれの自分にはまだ先のことと思っていたのが大間違いで、近くの会場はどこも六月まで予約が埋まっており、ようやく武蔵境の教習所で受講できることになったのでした。
 教室に入ると、すでに同年配の受講者が八人。まず自分の名前を正確に書いて仮名をふり、今日の年、月、日を用紙に書きます。次に四枚ずつ四回スクリーンに写し出される絵を、教官の指し示す順に、ニワトリ!バラ!と幾度も声を出して覚えていき、しばらく他の話があったあと、それを覚えているだけ用紙に書き、終りに時計の絵を用紙に画いて、教官の指定する時間を短針と長針で画き入れます。
 その後は視界のテストで、スケールの上を移動する点を、つい頭をめぐらして追ってしまって注意されたり、動体視力の検査ではボタンの位置がわからなくなって机を叩いたりの珍事が続出しますが、慣れている教官は驚く様子もありません。圧巻は六台並んだシミュレーターで、子供が出てきたらすぐにブレーキを踏み、歩行者が現われたらアクセルを離し、対向車線をバイクが来たらアクセルはそのままという技能検査で、ガタン、ガッチャンというすさまじい音が部屋中に鳴り響くのでした。最後は実車テスト。○○さんと呼ばれ机にすがりつきながらようやく立ち上り、覚束ない足どりで練習コースに向かう仲間たち。何十ヶ所もある教習所が何か月先まで予約で埋まっているということは、こうしたドライバーが町にあふれているということで、自分のことは棚に上げ、不安にもなります。ところで、不安といえば高速道路の逆走どころではなく、この国を逆走させようとしているらしい人々には、一体どんな講習を受けてもらえばいいのでしょうか。

(ようげん寺報 2015年4月15日発行 第10巻 第2号掲載)
高齢者講習会
お問い合わせ