いつか会える日

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百歳萬歳

 昨年の暮に本門寺の菅野貫首さまからお電話があり、酒井貫首さま(酒井日慈前本門寺貫首)が来年百歳を迎えられるので、何かお祝いの本を作りたいね、ということでした。
 一月に入り貫首さまと打合せをし、酒井さんの生い立ちからこれまでを写真で綴りながら、そこに皆さんからの祝辞を入れていこうということになり、本門寺布教部の皆さんに協力をしていただいて準備にかかりました。記念誌のタイトルは『人間大好き和尚、百歳萬歳』。酒井さんを語るとき「人間大好き」は、はずすことのできないキーワードだからです。
 ところが運び込まれてきた酒井さんのアルバムを見てその多さにびっくり。片手で持てないような分厚いアルバムが百冊以上はあるのです。更に驚いたのは、そのアルバムの一分の隙もない整理のされ方で、あらためて自分はとんでもない人と四十年以上も仕事をしてきたのだと、背筋がゾクッとしました。
 酒井さんは「一」の人だなと、数千枚に及ぶ写真を見ながら思いました。一心に一念を貫き、そして何に対しても一流を求めたからです。一流といってもブランド志向のそれではなく、自分の目から見ての本物、その人の本気の仕事ということです。「南無の会」の活動や月刊「ナーム」など出版活動においてもそれは顕著でした。「南無の会の歌を星野哲郎さんに作ってもらおう」「新しい連載は佐藤愛子さんがいい。さし絵は村上豊先生に」「ポスターを横尾忠則さんにお願いしよう」「次の対談に坂東玉三郎さんを頼んでくれ」……。その都度テレビ番組の"ダーツの旅"よろしく走りまわったものですが、間違っても「えーっ、無理でしょ」などと初めから言おうものなら、それこそ特大の一喝が飛んできます。仕事仲間にも友人にも一流を求めました。人それぞれの特性を瞬時に見抜き、その特性を生かし花ひらかせることを心から望んだのです。「人間大好き」のゆえんです。

(ようげん寺報 2018年4月15日発行 第13巻 第2号掲載)
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