…がくれた、幸せ
美術部
文・秋津良晴 絵・中山成子
 

 入部してひと月が経ち、1年生部員も増えました。しかし、名簿だけの部員は相変わらずです。彼らを含めると50名ほどが在部していました。隠れ部員の内の何人かはたびたび放課後にやって来ました。新入の女子部員などは恰好の餌食だったのです。
 その頃、1年生の男子部員は4人いました。私と岡崎、WとUです。Uは怪しげなビニ本オタクでしたが、憎めない性格でした。Wは元柔道部で体も大きく力持ちでした。しかし、気が弱い一面もありました。その日の放課後、4人は小部屋で頭を突き合わせていました。岡崎が、「やるしかなかろうもん」と言い、ボクは、「女子部員に問題が起きちょるしね」と、岡崎の意見に賛成しました。しかし

Wは、「できるやろうか?」と不安を言い、Uは、「何人おると?(相手は何人か)」と尋ねました。ボクはすかさず、「みんな」が対象者だと答えると、岡崎はそうだとばかりに首を縦に振りました。
 下校時間はとっくに過ぎて部室には電気が灯っていました。結局、WとUからは積極的な賛同は得られませんでした。しかし、ボクと岡崎は全部員による部会を開いて、条件闘争を実行する事にしたのです。条件の主なものは以下のようなものでした。
一、部員は週に3時間以上の美術活動を行うこと。
一、部員はその活動で得た結果を、月に一度の割合で提示する。
一、部員は部室での、許可された時間、場所以外での飲食は禁止する。
一、部費を滞納しない。既に滞納している分は即刻清算する。
 部会は部長先生同席のもとに行いました。内容は至極当たり前のものだったので反対者はいません。そして、ひと月も経たないうちに名簿だけの部員は一掃されたのです。あまりにも静かに、あっけなくボクらの計画は達成されたのです。Wが、
「これで良かとやろか」
と言ったのが4人の1年生男子部員の背筋を寒くしました。

(ようげん寺報 2015年6月15日発行 第10巻 第3号掲載)
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