…がくれた、幸せ
クラス替え
文・秋津良晴 絵・中山成子
 ボクは、生来、人見知りする質なので環境に馴染むのにも時間がかかります。中学校入学時の成績はがた落ちしました。高校に入ってからも、人にも環境にも授業にも慣れず、部活への意識が強まっていたものだから中間試験、期末試験と徐々に成績は下がって行ったのです。
 夏休みに入る前、狆が教壇上で二学期はクラス替えをすると言いました。小学校から中学校までの9年間、学期の途中でクラス替えするなんていう経験はありませんでした。もちろん、ボクだけではありません。周りでは不平、不満の声が沸々と湧いていました。しかし、長いものには巻かれろ? だった
のか、みんな試験勉強に熱を入れるようになっていました。
 みんなは、「成績なんて関係ない、どう生きるかが問題だ」とか何とかきれい事を言っていましたが、いざ試験でクラスを入れ替えられるとなると、態度は一変したのです。選ばれたクラスに居る者は、クラスを出されると言うのは「落ちこぼれ」「落第」を意味しているかのように見え、それがたまらなくプライドを傷つけたのです。だから、みんな頑張っていました。無理もありませんが、それこそ先生たちの思うつぼだったのです。ボクは、部活があり、絵を描くというルーティンがありました。やりたい事が沢山あったのです。生来の人見知りに加えて天の邪鬼のボクは、ひたすら夏休みを貪り、部活にいそしんでいました。
 そして二学期。夏休みを堪能したボクは、クラス替えの事などすっかり忘れて登校したのです。すると、一年生の教室前の廊下の壁にながーい紙が貼られていて、名前が書き連ねてありました。胸がドキンとしました。しかし、それも一瞬です。恥を覚悟で自分の名前を後ろから探しました。すると、国立一期クラスに残っているではありませんか。複雑な気分でした。あちこちでブツブツ言っている者がいました。どうやら友人のTも落とされたらしいのです。Tは人一倍プライドが高いので先が思いやられました。
(ようげん寺報 2016年4月15日発行 第11巻 第2号掲載)
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