いつか会える日

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年まわり

 境内いっぱいの蝉時雨の中、本堂と山門に吊ったガラスの風鈴が、時折り軽ろやかな音をたてています。今年は私にとっては年まわりが良くないようで、誰も面と向かっては言わないものの、だから何事についても自重するようにと、そんな空気が周囲に満ちていましたが、それでもなんとか七月まで来られたのだなと、そんな思いにふとなります。
 というのも節分前あたりから体のあちこちに不調が起こり、一時はずいぶん不安な気持にもなったのですが、それも六月中にはなんとか治まってきたようで、少しほっとしているからです。
 そうした中でこの半年をふり返ってみますと、自重しようにもできないさまざまなことが身辺に起きたことに気がつき、なるほど、そうしたことも含めて、これが自分の力ではどうにもならない“年まわり”ということなのかと、一人で納得したりしています。
 しかし、この間に起きたことを改めて考えますと、とても悲しい出来事と同時に、これから先、是非とも花ひらき実を結んでいってもらいたい、たのしみなことも多く、こんな年がこれまであったろうかと話し合っているのですが、いずれにしてもこれはもう、私一人の年まわりの話では済みそうにありません。
 そんな思いでいるところに先日、李政美さんから突然、今年の暮に養源寺でコンサートを開きたいという電話がありました。実はつい最近、私が死んだら李政美さんと寿(ことぶき)の野外コンサートをこの寺の境内でやってほしいと、身近な者に話したばかりでした。フリーコンサートで募金箱を置き、集まった募金は福島の原発事故で苦難に遭っている子供たちへの支援にと。そんな矢先の電話でしたからびっくりしましたが、もちろんこれは別の話です。きっと、いのちを愛しむ深い祈りと喜びに本堂が満たされる、素晴しいコンサートになることでしょう。思いがけないことは、まだまだ続きそうな気配です。

(ようげん寺報 2017年8月15日発行 第12巻 第4号掲載)
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